JAPAN MEDIA ARTS FESTIVAL

メディア芸術海外展開事業日本のメディア芸術を世界へ

アヌシー国際アニメーションフェスティバル 2018

参加概要

「アヌシー国際アニメーション映画祭」は、1960年にカンヌ国際映画祭のアニメーション部門が独立して始まった、国際アニメーションフィルム協会(ASIFA)公認の映画祭で、世界最大規模のアニメーション映画祭として知られています。毎年6月にフランス東部スイス国境近くの山々に囲まれたアヌシー湖畔の街で開催され、コンペティション上映の他にも、カンファレンスや見本市など多彩なイベントが開催されます。

エキシビジョン テーマ
TOKYO SCRAMBLE -アニメーションが描く東京-

巨大都市東京。何ものをも混在させ、異なるものを出合わせ、過去と未来、現実とバーチャルという時空をかき混ぜる。東京にはそこから生まれるエネルギーが常に満ちている。
そんな東京を内外のクリエーターたちはどのように描いたのか。東京の発するパワーをどう作品に取り入れたのか。
この展示では、歴代のメディア芸術祭受賞作品を中心に、「TOKYO SCRAMBLE」というテーマで作品を選んだ。あるものは抽象的に、またあるものは人間的に巨大都市を表現し、全体としてみると、まさに東京・渋谷のスクランブル交差点のような強いパワーを放っている。

キュレーター 岡本美津子


レポート
TOKYO SCRAMBLE -アニメーションが描く東京-

会場内は19台のiPadによる映像展示の他に、後藤映則氏インスタレーション「toki- CROSSING #01」、村田朋泰氏インスタレーション「オノコロ山」「家族デッキ」、およびストップモーションアニメーションの人形が展示されました。
展示設営時から興味津々な様子のギャラリーが集まり、MIFA(併設見本市)が始まると連日多くの人がブースに訪れ、熱心に作品を鑑賞したり、またアーティストやスタッフへたくさんの質問を投げかけていました。
日本のアニメーションの多様性やクオリティを示す、MIFAの中でもひときわ存在感のあるブースとなりました。


Program Exhibition Venue: MIFA Booth# (4.A01)

Screening with iPad & COMIC

“モブサイコ100” (2012) (コミック)
著者: ONE
“鉄コン筋クリート” (2006) (アニメーション)
監督: マイケル・アリアス
“鉄コン筋クリート” (1993) (コミック)
著者: 松本大洋

Installations

“toki- CROSSING #01” (2016) H10.0*W50.0*D50.0cm
“toki- CROSSING #01” (2016) H10.0*W50.0*D50.0cm
アーティスト: 後藤映則
[平成29年度 第20回/アート部門/審査委員会推薦作品]

toki-シリーズでは動きから「時間」を形象化・実体化させて、動きと時間の関係性や時間の美しさ、性質を捉えようとしている。
toki- CROSSING #01では、とある日に家の近くの横断歩道を渡った12人をひとつの時間軸に繋げて、その場にいた他人同士の共通点を探っている。
©AKINORI GOTO

“Family Deck” (2010)  H73.0*W88.5*D224.0cm
“家族デッキ” (2010)  H73.0*W88.5*D224.0cm
アーティスト:村田朋泰
[平成21年度 第13回/アニメーション部門/審査委員会推薦作品]

村田朋泰が2007年に発表し、文化庁メディア芸術祭の審査委員会推薦作品などにも選ばれた短編アニメ「家族デッキ」の撮影に使用されたセット。村田の過去の記憶に残る風景がモチーフになっている。
©TMC

“Mt. Onokoro” (2016) H80.0*W200.0*D160.0cm
“オノコロ山” (2016) H80.0*W200.0*D160.0cm
アーティスト: 村田朋泰

村田朋泰が2016年にニューヨークにて発表し、映像作品「翁舞 / 木ノ花ノ咲クヤ森」に出てくる洞窟を使って作られており、古事記に登場する「自らから凝り固まってできた島」である淤能碁呂島( おのごろしま) をモデルにしている。
©TMC

アーティスト・トーク

Venue: Booth 4.A01

後藤映則   6月13日(水) 17:00~18:00
Akinori Goto
Photo by Bumpei Kimura

【プロフィール】
武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科卒業。代表作に時間の彫刻「toki-」シリーズ。近年の主な展覧会にSXSW Art Program 2017やArs Electronica Festival 2017など。

村田朋泰   6月14日(木) 16:00~17:00
Tomoyasu Murata

【プロフィール】
東京藝術大学美術学部デザイン科卒業。2002年同大学院デザイン科修了。2001年に人形アニメ『睡蓮の人』で文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞。また「朱の路」で広島国際アニメーションフェスティバルにおいて優秀賞を獲得。Mr.ChildrenのPVや、ap bankのPVなどを手掛ける。

レポート
アーティスト・トーク

6月13日17:00〜 ブースにて後藤映則氏のアーティストトークがありました。
「toki- CROSSING #01」の動きに惹きつけられた来場者が、次々と質問を後藤氏へ浴びせていました。

後藤映則氏コメント
これまで参加してきた現代アートやテクノロジー系の展覧会とは違い、アニメーションフェスティバルだけあって「動き」についての質問が多かったのが印象的でした。
日本酒を飲みながらカジュアルに様々な国の人とお話しできて、海外展示ならではの貴重なアーティストトークとなりました。


アーティスト・トーク

6月14日16:00〜 ブースにて村田朋泰氏のアーティストトークがありました。
「オノコロ山」「家族デッキ」のインスタレーション、人形、ストップモーションアニメーションについての質問が数多く寄せられました。

村田朋泰氏のコメント
アーティストトークでは「日本の人形アニメーションを見る機会がほとんどないから興味深い」といった意見や、実際にセットやインスタレーション作品が目の前にあることに感動した3Dクリエイターもいました。この展示を通して、日本のアニメーションにおける多様性を多くの方々にみていただく機会となりました。

Screening program

村田朋泰 ストップモーション アニメーション特集

監修:岡本美津子

村田朋泰(1974年生)は、日本の伝統芸能であり、世界無形文化遺産でもある「文楽」からインスピレーションを得て、パペットアニメーションの制作を始めました。喜怒哀楽を主に一人で伝える太夫、音楽で心理、緊迫感、雰囲気を描く三味線、頭の角度や手の仕草で人形に命を吹き込む人形遣いで構成される文楽同様に、目、耳、肌、空気感で鑑賞する表現方法としてインスタレーションとパペットアニメーションを用いています。作品を通して、日本人のアイデンティティの1つである、あらゆるものが変転し移ろいゆくものにこそ美しさを感じる日本人の「無常観」を一貫して表現しようとしています。
初期の作品、『路』シリーズでは、「言葉ではないもの、言葉にできないこと、些細なこと、些細なもの」を人形の目の動きと手の仕草で表現し、「不在」をテーマに常になき様という無常観を描いています。
『家族デッキ』は、村田の近所にあった古い理髪店をモデルに、家族の日常生活を描いた作品です。また、その理髪店をミニチュアセットで再現した「すずらん理容店」のインスタレーション作品は、急速に変わり、移ろいゆく現代の景色を、その無常を記録する装置として制作しました。実在し、もう存在しない理髪店を用い、オリジナルの家族の物語を加えることで、村田は作品を記憶装置にしようと試みました。
2011年の東日本大震災の後、村田は生と死に関する記憶の旅をテーマにした新しいシリーズの制作を始めました。このシリーズは、5つの物語で構成される予定で、現在は3つの物語、『翁舞 / 木ノ花ノ咲クヤ森』、『天地』、『松が枝を結び』が完成しています。このシリーズで、村田は、「祈り、記録、信仰」テーマとした物語で「無常観」を描こうしています。

2018年6月15日(金) 14:30-15:50
監督舞台挨拶あり
劇場: PATHE ANNECY Theater Room #3


レポート
Screening

6月15日14:30〜 THEATRE PATHE#3にて“Tomoyasu Murata Program-Stop Motion Animation”が公開されました。
販売開始から数日でチケットは完売。アヌシーにおける日本アニメーションの注目度の高さがうかがえます。
当日は村田監督の登壇があり、作品解説とQ&Aが行われました。

村田朋泰氏のコメント
特別上映はほぼ満席でした。日本は天災から多様な信仰や文化が形成され、そのことが私の作品テーマになっている点、またセリフがなく仕草や目線で演出している点について挨拶させていただきました。Q&Aでは日本人のアイデンティティについてや美意識について、かなり本質的な質問をいただきました。


“Nostalgia” (2000) (16min)
睡蓮の人” (2000) (16min)

平成13年度 第5回/アニメーション部門/優秀賞
「遠い記憶」なつかしくて、せつなくて、微笑ましい思い出。かわらない日常の中のふとしたきっかけから記憶のかけらが蘇る。
かけらとかけらとが、やがてひとつの遠い記憶として姿を表す。
それはまるで大切な人からのメッセージのように。
©TMC

“Scarlet Road”(2002) (13min)
朱の路”(2002) (13min)

平成14年度 第6回/アニメーション部門/審査委員会推薦作品
暗く長いトンネルを走る列車。悲しみを抱えた男は朱の花を差し出す少女と出会い、短い旅へと向かう。言葉ではないもの、言葉にはできないもの。些細なこと。些細なもの。その短い旅の終わりに男は長く暗いトンネルを抜ける。
©TMC

“Family Deck Episode 1” (2007) (4min)
“家族デッキ Episode 1” (2007) (4min)

平成21年度 第13回/アニメーション部門/審査委員会推薦作品
東京の下町にある床屋を経営する高田家は、両親と中学生のお姉さん、小学生の弟の4人家族。この床屋に住まう七福神(髪様)のいたずらで、高田家の日常にはちょっと不思議な出来事が起こります。その間にも家の中にはゆっくりと時間が流れ、それぞれの生活が描かれていきます。
©TMC

“Okinamai / Forest This Flower Bloom” (2014-2015) (11min)
木ノ花ノ咲クヤ森” (2014-2015) (11min)

東日本大震災をテーマにしたシリーズ「生と死にまつわる記憶の旅」の第1章。記憶を失った主人公は過去の痕跡を探しながら、すべて消し去ろうとする二人のハンターから逃走している。翁は、変わらないでほしい願いと、変わってゆく現実を語り継ぐ存在として登場し、忘却の縁(ふち)として静かに舞い続ける。
©TMC

Japan Media Arts Festival at Annecy 2018
“松が枝を結び” (2017) (16min)

東日本大震災をテーマにしたシリーズ「生と死にまつわる記憶の旅」の第3章。
津波で引き裂かれた双子。スノードームは、現在と過去を結ぶ。現在と過去を行き来しながら、死者は記憶を取り戻していく。月と太陽が重なり、過去と現実がつながるうさぎ男は、記憶を取り戻した少女を黄泉の世界に導く。
©TMC

Japan Reception

Japan Reception

6月14日19:00〜 Chill Out Roomにてジャパンレセプションが行われました。
会場へ駆けつけた文化庁藤原文化部長にご挨拶をいただいたほか、長編コンペティションにノミネートされた「若おかみは小学生!」高坂希太郎監督、クロージングセレモニーで上映された「DREAMLAND」水江未来監督、テレビ作品コンペティションでクリスタル賞を受賞した「ピッグ 丘の上のダム・キーパー」Eric Oh監督、基調講演をされた株式会社ポリゴン・ピクチュアズCEO塩田周三氏、またメディア芸術祭の展示「TOKYO SCRAMBLE」をキュレーションされた岡本美津子氏のご挨拶、参加作家の後藤映則氏、村田朋泰氏より、作品の説明やご挨拶がありました。
湖畔をながめる開放感溢れたパーティ会場へ日本以外各国より300人以上のお客様がご来場され、様々な国のクリエイターやプロデューサー、ディストリビューターなど映画関係者が幅広く交流する場となりました。

招待国

Country of Honor

今年のクロージングセレモニーで、来年のアヌシー国際アニメーション映画祭の招待国は日本になることが発表されました。
日本のアニメーション作品が賞賛され、映画祭が日本一色に染まります。
世界のアニメファンへ日本のアニメーションの多様性やクオリティを示す機会として、多くの作品や作家を送り出したいと思います。
詳細について随時発表していきますので、どうぞお楽しみに!

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